意図しないドーピング(うっかりドーピング)を防止しよう 薬剤師向けページ

このページでは、アンチ・ドーピング、特に「意図しないドーピング(うっかりドーピング)」による違反者を出さないために、薬剤師などの医療従事者を対象とした、情報提供をしています。

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アンチ・ドーピングについて

ここでは医療従事者を対象とした専門的な内容になっておりますので、基本的事項は、一般・選手向けページを参照してください。

禁止表は毎年1月1日に変更されます(原則1年に1回)。
最新の情報を確認してください。

I.2022年禁止表国際基準

ドーピング禁止物質及び方法は世界アンチ・ドーピング機構(WADA)の世界アンチ・ドーピング規程(CODE)、禁止表国際基準(以下、禁止表)に定められています。
禁止表は少なくとも1年に1回1月1日に更新されます。毎年10月に翌年の禁止表が公表され、翌年の1月1日から新しい禁止表が発効します。
2021年に世界アンチ・ドーピング規程が6年ぶりに改定され、禁止表に「特定方法」と「濫用物質」という新たな概念が追加されました。最新の情報を確認してください。
「特定方法」は、以前からあった特定物質の考え方を方法にも当てはめたもので、競技力向上以外の目的のために使用される可能性が高い方法です。M2.2(静脈内注入および/又は静脈注射)がこれに該当します。特定方法によるアンチ・ドーピング規則違反が意図的でなかった場合、制裁が軽減されます。
「濫用物質」はスポーツの領域以外の社会で頻繁に使用されている(濫用されている)物質です。2021年にコカイン、メチレンジオキシメタンフェタミン(S6.興奮薬)、ジアモルヒネ (S7.麻薬)、テトラヒドロカンナビノール(S8.カンナビノイド)が指定されました。濫用 物質の摂取が競技力の向上とは関係ないことが立証されれば、違反の制裁が軽減されます。
2022年は「禁止物質」の糖質コルチコイド(S9)のすべての投与経路が競技会(時)のみ禁止となりました、また投与経路ごとに競技開始時点まで最低限考慮すべきウオッシュアウト期間が設けられました。さらにベータ2作用薬(S3)の吸入量の変更がありました。

2022年禁止表は、次の通りです。

◆各セクションにおける禁止薬剤の一例

表にあげる禁止物質がすべてではありません。不明な時は必ずスポーツファーマシストに確認してください。

(  )内は、その薬剤の使用症例の代表例

S1.蛋白同化薬男性ホルモン、蛋白同化ステロイド、クレンブテロール
S2. ペプチドホルモン、成長因子、関連物質および模倣物質エリスロポエチン製剤、HIF活性化薬、成長ホルモン
S3.ベータ2作用薬①~④の吸入薬は、添付文書に従って使用される時は禁止ではない。
①サルブタモール(24 時間で最大1600μg、いかなる用量から開始しても8 時間で600μg を超えないこと)
②ホルモテロール(24 時間で最大投与量54μg)
③サルメテロール(24 時間で最大200μg)
④ビランテロール(24時間で最大25μg)
S4.ホルモン調節薬および代謝調節薬SERMs、抗エストロゲン薬、インスリン
S5. 利尿薬および隠蔽薬利尿薬〔降圧薬配合剤〕、イソソルビド、プロベネシド(※他の痛風治療薬は禁止ではない)
※局所眼科用使用の炭酸脱水素酵素阻害薬(ドルゾラミド、ブリンゾラミド等)は禁止でない
S6.興奮薬エフェドリン、メチルエフェドリン、プソイドエフェドリン(特に市販の感冒薬、鼻炎治療薬、鎮咳薬など)、起立性低血圧治療薬、メチルフェニデート
※点眼、点鼻に使用される血管収縮薬は禁止ではない。
※アドレナリン(単独および局所麻酔薬との併用)の局所使用(鼻、眼等)は禁止されない
※コカイン・MDMAは濫用物質
S7.麻薬モルヒネ、オキシコドン、フェンタニル、ブプレノルフィン、ペンタゾシン(向精神薬も禁止表では、麻薬のセクションに含まれる)
※コデインは、禁止物質ではない
※ジアモルヒネは濫用物質
S8. カンナビノイド大麻由来物質(ハシシュ/マリファナ)大麻製品、テトラヒドロカンナビノール
※カンナビジオールは除く
※テトラヒドロカンナビノール(THC)は濫用物質
S9.糖質コルチコイド抗アレルギー薬配合剤、プレドニゾロン
経口、経直腸、静脈注射、筋肉注射、口腔内使用(2021年3月22日付WADA通達)は禁止
※外用、局所注射など禁止ではない

◆禁止方法の一例

M1.血液および血液成分の操作輸血
※酸素自体の補給は禁止ではない
M2.科学的および物理的操作(特定方法)静脈内注入および/または静脈注射で12時間あたり計100mLを超える静脈注射は禁止(特定方法)
※入院、外科手術、または臨床検査のそれぞれの過程において正当に受ける場合は除く
M3.遺伝子および細胞ドーピング遺伝子編集、遺伝子サイレンシング、遺伝子導入技術
正常な遺伝子を装飾した細胞の使用

◆糖質コルチコイドの利用についての変更点

2022年1月から競技会時すべての注射使用、経口使用(口腔内(頬)、歯肉内、舌下等を含む)、経直腸使用がすべて禁止となりました。
注射経路の例: 静脈内、筋肉内、間節周囲、間節内、腱周囲、腱内、硬膜外、髄腔内、 滑液嚢内、病巣内(ケロイド等)、皮内および皮外などがある。
経口使用の例: 口腔粘膜(口腔内(頬)、歯肉内、舌下等)を含む。
その他の投与経路【吸入、局所投与を含む:歯根管内、皮膚、鼻腔内、眼(目薬)、肛門周囲】は、製造業者が承認を受けた用量および治療適応内で使用する場合は禁止されない。

・ウォッシュアウト期間について
禁止されている投与経路での糖質コルチコイドの使用は競技会(時)のみ禁止となるため、競技会外においては使用することが可能です。
しかし、競技会直前に糖質コルチコイドを使用してしまうと、競技会(時)の検査で禁止薬物として検出されてしまう可能性があります。そのため、競技者が競技の開始時点まで最低限考慮すべきウォッシュアウト期間が設けられました。

経路 糖質コルチコイド ウォッシュアウト期間
経口 すべての糖質コルチコイド; 3日
但し、トリアムシノロンアセトニド 10日
筋肉内 ベタメタゾン; デキサメタゾン;
メチルプレドニゾロン
5日
プレドニゾロン; プレドニゾン 10日
トリアムシノロンアセトニド 60日
局所(間節周囲、間節内、
腱周囲、腱内)
すべての糖質コルチコイド; 3日
但し、トリアムシノロンアセトニド;
プレドニゾロン; プレドニゾン
10日

ウォッシュアウト期間とは、体内に吸収された薬物がほぼすべて排出される期間を示します。 但し、個人差があるので、薬物が完全に排出されることを保証するものではありません。
ウォッシュアウト期間中に禁止されている経路を通じて糖質コルチコイドを投与する必要がある場合、治療使用特例(TUE)が申請できるようにしておくよう伝えましょう。

II.治療使用特例(TUE)

治療使用特例(Therapeutic Use Exemptions:TUE)は、禁止物質・禁止方法を治療目的で使用したい競技者が申請して、認められれば、その禁止物質・禁止方法が使用できる手続きです。
TUE は、世界アンチ・ドーピングプログラムの中のアンチ・ドーピング規程(世界アンチ・ドーピング規程)とそのTUE 国際基準(ISTUE)で手続きが定められています。参考資料としてガイドラインとMedical Information to Support the Decisions of TUECs が世界アンチ・ドーピング機構(WADA)によって提供されています。(https://www.wada-ama.org/

世界規程とISTUE の和訳は(公財)日本アンチ・ドーピング機構(JADA)のホームページ(http://www.playtruejapan.org/)からダウンロードできます。

禁止物質・禁止方法は、最新の『禁止表国際基準』を参照してください。最新の国際基準の和訳はJADA のホームページ(http://www.playtruejapan.org/)からダウンロードできます。

「アンチ・ドーピングと医療-2022年版-」(日本アンチ・ドーピング機構) (https://www.realchampion.jp/resources/entry_img/tue2022_v2.pdf)を加工して作成

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