災害時における薬剤師会の取り組み

大規模災害が起きた場合、薬剤師会では組織的な取り組みを行うこととしています。
ここでは主に東京都及び東京都薬剤師会がどのような取り組みを行うかを説明します。

東京都の対応

東京都における災害時の医薬品、医療資器材の備蓄、供給体制は次のようになっています。

医薬品等の備蓄・供給体制の考え方

(1) 初動期(概ね被災日から2日間)の備蓄・供給体制

  • 2日間は被災地外からの供給がないことを前提に、区市町村は備蓄している医薬品等(2日分備蓄することになってい る。)を医療救護所に供給するとともに、不足する場合には都に要請する。
  • 東京都は区市町村からの要請に基づき、都が備蓄している医薬品等(2日間)を供給するとともに、不足する場合には関係業界団体に要請する。

(2) 医薬品ストックセンター等の設置

  • 初動期以後(被災日から3日目以降)は、区市町村は地区薬剤師会と協議し、速やかに「医薬品ストックセンター」を設置し、医薬品の供給体制を確立する。
  • 東京都は必要に応じ東京都薬剤師会と協議し、被災地外の区市町村に「医薬品集積センター」を設置し、円滑な医薬品等の供給体制を図る。
    このように、2日間は外部からの応援体制がとれないという設定で、その間は、被災地内で緊急対応するという考えです。

薬剤師会の取り組み

大災害がおきた際、東京都薬剤師会は概ね次のような体制で救護活動に取り組みます。

薬剤師会の取り組み

薬剤師班の業務

東京都薬剤師会は、東京都からの要請に基づき次のような業務を行うことになっています。

(1) 医薬品集積センターにおける業務(被災地外に設置される。)

  • 国や被災地外からの医薬品等の受入れ、使用可能な医薬品の仕分け及び管理を行う。
  • 医薬品ストックセンターからの供給要請に基づき必要な医薬品等を払い出す。
  • 医薬品等の需給状況を把握し、不足医薬品等の供給を東京都に要請する。
  • ボランティア薬剤師の受入れ、調整、派遣指示を行う。

【平成18年度の訓練風景】

(2) 医薬品ストックセンターにおける業務(被災地内に設置される。)

  • 国や被災地外の区市町村集積センターからの医薬品等の受入れ、使用可能な医薬品の仕分け及び管理を行う。
  • 地域内の医療救護所等からの供給要請に基づき必要な医薬品を払い出す。
  • 地域内の医療救護所等からの医薬品供給要請状況を把握し、不足医薬品等について区市町村や医薬品集積センターに供給を要請する。

(3) 医療救護所内における業務

  • 医薬品ストックセンターからの医薬品の受入れ及び管理を行う。
  • 医療救護所の救護班及び巡回医療救護班へ必要な医薬品を供給する。
  • 医療救護所の受診患者に対する調剤及び服薬指導を行う。
  • 軽症患者等に対する一般用医薬品等の供給を行う。

(4) 避難所における業務

  • 必要に応じて巡回医療救護班や保健師班と連携の上、避難所の被災者に対する服薬指導、薬事相談を行う。
  • 必要に応じて避難所の被災者が常用している医薬品等の調査、把握を行い医療救護班への連絡、医薬品の交付を行う。

(5) 新潟県中越地震での取り組み

【中越地震のお薬相談風景】

東京都薬剤師会では震災後6日目の平成16年10月29日から順次、各支部からのボランティア薬剤師が現地に入り、救援活動に従事しました。
医薬品を渡す際、ただ渡すのではなく右のようなアンケートも一緒にとりながら渡しました。アンケート結果からどのような医薬品を必要としているかを把握するのです。
供給されてくる医薬品と必要とする医薬品にずれがあることも救援活動を通して分かりました。今後の医薬品供給における検討材料とすることができました。
現地での活動内容は東京都との取り決めにそった内容ですが、医薬品の供給内容は次のように変化しました。
災害初期には消毒薬が必要とされました。しかし2週間もすると生活環境の変化によるストレスのため安定剤が、また食事の変化により便秘になるため緩下剤が、さらにトイレに行くのが躊躇(ちゅうちょ)されるため水分をとらず口内が乾燥したためか口内炎を起す人が多くなり口内軟膏が求められました。今後の医薬品供給は、このような経時的変化に応じた対応が求められます。

〔さいごに〕

大規模災害時には、私たちの気持ちも平常心を失いがちです。特に、服薬により病気をコントロールされている方はより不安を抱えることとなります。
「手元に薬がない、どうしたらよいのか?」
「数日服薬していないが大丈夫だろうか?」
私たちは、被災された方の不安に最善を尽くしてお答えする心構えでおります。
そのような時にこそ、身近にいる薬剤師に相談して下さい。